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先人たちの生きるための努力は、故郷の誇れる名産へ

幻のとうもろこし【タカネコーン】

先人たちの生きるための努力は、故郷の誇れる名産へ

高山市内からダム湖沿いの自然を眺めながら車を走らせること約1時間。山間の道を登ると、ふっと視界が広がり、ソバの花が辺り一面を白く染めて、朝霧が立ち込め墨絵のような美しい景色にたどり着きます。

標高約1,300mの高地にある高根町留之原地区。北を向けば目前に乗鞍岳が、南は御嶽山の北端・継子岳の裾野という高原地帯です。
8月とはいえまだ空気のひんやりした早朝3時より、幻のとうもろこしと言われる「タカネコーン」の収穫が始まっていました。

左:御嶽の南の峰が継子岳に隠れてしまうため、きれいな富士山型に見え、ここからの眺めは日和田富士と呼ばれています。
右:北にはとうもろこし畑の向こうに優雅な曲線をえがく乗鞍岳

周辺にはこの標高と高原地帯の気圧の低さを活かした、世界のトップアスリートが訪れる飛騨御嶽高地トレーニングエリアもあり、限られたこの地区で旬を迎えるわずかな期間だけ収穫されるとうもろこしは、市内でもほとんど流通しない最高級品なのです。
ぷりぷりとした上品なバイカラーの粒は、皮も薄く瑞々しいのが特徴。フルーツのような濃厚な甘みとコクが人気となり主に愛知県などに出荷されています。

この地で約5,000ヘクタールの畑でタカネコーンを生産する農家の1軒、中島兼一さんをおたずねしました。

タカネコーンの生産者 中島兼一さん

「もともとこの土地は自分の父が昭和20年代に開墾したところで、もとは雑木林だったね。そこで昔はこのあたりでも稲も作っていたり、田んぼもあったけど、そばやとうもろこしは雑穀として、米の出来ない年でもそばの出来ない年はない、といって必ず作ったもんです。」

飛騨の農家の娘達が、野麦峠を越えて信州の製糸工場へ「糸ひき」として働きに行き生活を支えたという「ああ野麦峠」の舞台もほど近く、厳しい自然環境は「食べるための農業」さえも苦労の多いものだったそうです。

そんな厳しい環境を逆手にとり、「売れる農業へ」と生産者が集まり取り組んだのが「タカネコーン」でした。

高根に来ん(飛騨弁で来ない?の意味) とかけたタカネコーン

「この辺りは冬は寒さも厳しい土地で、雪も多くマイナス20度より下がることもある。夏でも朝晩は冷え込んで日中は温かい。その気温差でとうもろこしの糖度がぐっと上がり、18度から天候に恵まれれば20度になるときもあるね。」
ひと房400~450g以上で出荷されるというタカネコーンは、50cmくらいに成長するまでは霜よけのハウスで栽培され、その後、露地栽培で手間暇をかけて育てられます。
「一番果」と呼ばれる間引きでひと房のみを残し、養分や水分を十分に集中させることで、甘み、大きさ、旨味にもすぐれたとうもろこしができるのです。

粒が大きく糖度はメロンより甘いと言われるタカネコーン

当初ピーターコーンで始めた栽培も、現在は甘いだけでなく旨味の強いグラビスと言う品種に変え、中島さんの畑には1万本を植えています。
一面をゆったりと流れる朝霧に包まれたとうもろこし畑は、獣害対策の電線も貼られ、機械も入らないことから、完全に手摘みで毎日200~300本を収穫されるそう。
もぎたてをそのまま、かじらせてもらうと、サクッと弾けた実からほとばしる甘さに驚きます。

「今日は晴れる。日和田富士っていって、もうすぐ御岳がここにキレイに見えるよ。」
指さした中島さんの言葉通り、やがて畑の奥も見渡せなかった朝霧が、サッと晴れると見事な御岳と乗鞍が向き合うように姿を見せてくれました。

エネルギーとパワーを感じさせてくれるかのような雄大な姿も、ここに暮らす中澤さんにとっては、まさにあるがままの自然の一部なのでしょう。

とうもろこしは、早朝に収穫したものが一番甘いといいます。日中、実を成長させるため、とうもろこしの呼吸が活発化しますが、そのエネルギーには糖分が使われます。夜になるとまた糖分を貯め込むため、
早朝に収穫したものが一番甘いんです。朝露がおり、まだひんやりとした獲れたてのタカネコーン。

収穫は一番、甘さがのっている午前3時より、朝霧の中始まります。

受け継いできた土地の歴史は、手間や労力がかかるものの、生産者が誇れる名産へと変わりました。
厳しい自然環境から生まれる、やさしい甘さとはじけるような瑞々しさは飛騨を代表する自慢の逸品です。

タカネコーンを使用した料理の数々

2021/09/15 UP 取材協力:タカネコーン生産・販売 中島兼一さん

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