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乗鞍のふもとで目指すは

飛騨の冷涼な景色が思い浮かぶワイン「飛騨高山ワインアポセカリー」

醸造栽培研究家の石上寛さん、佳菜さんご夫妻

ぶどう栽培から醸造まで行うのは、醸造栽培研究家の石上寛さん、佳菜さんご夫妻。

乗鞍連峰の麓にある高山市久々野町。豊かな自然のなかでりんごや桃などの果樹栽培を行ってきたこの地は山々に囲まれ、春先に桜や桃など様々な果実の花が一斉に咲きそろう様から、飛騨の桃源郷ともいわれています。

岐阜県下初めてのワイナリー「飛騨高山ワインアポセカリー」

飛騨地区のみならず岐阜県下初めてのワイナリー「飛騨高山ワインアポセカリー」。

ブドウ栽培を行う石上寛さん、佳菜さんご夫妻

ブドウ栽培を行う石上寛さん、佳菜さんご夫妻

飛騨地区のみならず岐阜県下初めてのワイナリー「飛騨高山ワインアポセカリー」。ブドウ畑は飛騨川沿い山道を登った先にある丘の上。垣根仕立てのブドウ園と奥には隣在するリンゴ園が続き、切り取られたように空が近く、思わず声をあげてしまいます。

この山あいの美しい畑でブドウを栽培し、ワインづくりに精を出すのは、自らを醸造栽培勉強家と名乗る石上寛さん、佳菜さんご夫妻。札幌で出会ったお二人、北海道出身で関西で会社員をしていた寛さんですが、薬剤師でもある佳菜さんの実家の都合で、飛騨高山に移住することになります。

「移住後はインターネット関係の仕事をしていたのですが、せっかく同じ家にいながらお互いが全く違う事をしている毎日でしたね。40 歳を迎えるころから、なにか二人で一緒にできる仕事、地域にも貢献出来るような、ずっと生涯できる仕事がしたいね、と話すようになったんです。」

それならば農業がいいだろう、となったものの、飛騨の特産であるトマトやホウレンソウ

石上寛さん、佳菜さんご夫妻へのインタビュー

の栽培にはすでに沢山の先人がいます。素人が手をだしても誰にも迷惑をかけない、誰もやっていないことをやりたい、と考えるようになりました。

そんな中、薬剤師の佳菜さんが薬用酒としてワインも扱っていたことから、ブドウを栽培し、ワインを作るのはどうだろう?と提案します。

石上寛さん、佳菜さんご夫妻へのインタビュー

「移住後はインターネット関係の仕事をしていたのですが、せっかく同じ家にいながらお互いが全く違う事をしている毎日でしたね。40 歳を迎えるころから、なにか二人で一緒にできる仕事、地域にも貢献出来るような、ずっと生涯できる仕事がしたいね、と話すようになったんです。」
それならば農業がいいだろう、となったものの、飛騨の特産であるトマトやホウレンソウの栽培にはすでに沢山の先人がいます。素人が手をだしても誰にも迷惑をかけない、誰もやっていないことをやりたい、と考えるようになりました。

そんな中、薬剤師の佳菜さんが薬用酒としてワインも扱っていたことから、ブドウを栽培し、ワインを作るのはどうだろう?と提案します。

水はけのよいブドウ畑

ブドウ畑のある久々野町は、古くから水はけのよい土地で、朝晩の気温差が激しいことから飛騨リンゴや桃などフルーツ栽培が盛んな土地

「はじめは誰も本気にしてくれませんでした。同じ久々野地区で有名ワインショップを営む友人(坂本酒店 坂本雄一さん 別記事にて紹介)からも絶対に失敗するからやめておけ、と説得されました。

市に相談に行った時も、少々時間が欲しいと言われ、次に訪ねたときは県職員や農協の方など7~8人の方が参席され、さまざまな質問に飛騨でもできる、と自分たちが調べたワイナリーの開業に向けてのプロセスや資金繰りを検証して可能性についてお話させていただいたんです。

温暖化が進む今、飛騨でもワイン用のブドウの栽培は可能であること、食文化の豊かな飛騨高山は造り酒屋が7軒、現在はウィスキーやリキュールの醸造所もあるのに、ワインがないことなど、インバウンドの増加による需要など、飛騨での可能性に手ごたえを感じていただいて、それでは、と候補地へ案内していただけたんです。」

3か所のうち、一番最後に案内されたのが現在の畑。南向きの斜面で理想的なものの、かつてはリンゴ畑だったという耕作放棄地は長年の放棄により木々が生い茂り、ジャングルのようでした。

「土地はみつかったものの、はじめはどうやって手をつけたらいいものか悩みました。そんな状況の中、開墾には友人たちや地元の方々がたく

インタビューに応じる石上寛さん

さん手伝ってくれたんです。飛騨には木工関係の仕事につく方も多く、また家の薪ストーブに使いたいからと自前のチェンソーや道具を持って駆けつけてくれました。2019年の秋から開墾をはじめ、翌春にはひとつめのブドウ畑にシャルドネの苗を植えることができました。

インタビューに応じる石上寛さん

温暖化が進む今、飛騨でもワイン用のブドウの栽培は可能であること、食文化の豊かな飛騨高山は造り酒屋が7軒、現在はウィスキーやリキュールの醸造所もあるのに、ワインがないことなど、インバウンドの増加による需要など、飛騨での可能性に手ごたえを感じていただいて、それでは、と候補地へ案内していただけたんです。」

3か所のうち、一番最後に案内されたのが現在の畑。南向きの斜面で理想的なものの、かつてはリンゴ畑だったという耕作放棄地は長年の放棄により木々が生い茂り、ジャングルのようでした。

「土地はみつかったものの、はじめはどうやって手をつけたらいいものか悩みました。そんな状況の中、開墾には友人たちや地元の方々がたくさん手伝ってくれたんです。飛騨には木工関係の仕事につく方も多く、また家の薪ストーブに使いたいからと自前のチェンソーや道具を持って駆けつけてくれました。2019年の秋から開墾をはじめ、翌春にはひとつめのブドウ畑にシャルドネの苗を植えることができました。

収穫されたブドウ

同時に気候的に近い長野県と、富山県のワイナリーに修行に赴き、2022年に初収穫のブドウを修行先で委託醸造してもらいファーストヴィンテージをリリース。1年ごとに開墾もすすめ、ピノグリ、ソービニヨンブランなど品種も増えました。

ワイン造りを行う石上寛さん、佳菜さんご夫妻

ワイン造りを行う石上寛さん、佳菜さんご夫妻

2人が目指ししているのは飛騨の豊かな自然の中でこの土地でしか造れないワイン造り。

屋号である「飛騨高山ワインアポセカリー」とは古風な英語で薬局や薬剤師を意味し、元は貯蔵庫の意から転じたもの。経営母体が調剤薬局であり、佳菜さんが薬剤師でもあることから、薬局のワイン、ワインの貯蔵庫という意味があります。

ブドウ畑で作業を行う石上寛さん、佳菜さんご夫妻

ふたりの生活は一変しました。2ヘクタールのブドウ畑、朝から日暮れまで畑での作業の日々が続きます。
2024年は、遅霜の被害で苦労もしました。

「収穫には地域の方をはじめ、飲食店の方々、酒屋さん、ボランティアの方など大勢の方が手伝いに来てくださいました。」

出来上がったワイン

出来上がったワイン

出来上がったワインは爽やかな酸味が立ち、きりっと締まりのある雪解け水を思わせるような味わい。飛騨の清涼な空気や自然が思い浮かぶような白ワインです。

同町内で収穫した飛騨りんごを使ったシードルも好評

同町内で収穫した飛騨りんごを使ったシードルも好評

自然をごく身近に感じて過ごす毎日のなか、同じ目標を持ち勉強し、これまで以上に会話もたくさんするようになったと寛さん。現在は同地区のリンゴを使ったシードルづくりも好調で、ワインの年間生産量は、今、現在は年間1,000本弱だが、将来は10,000本に増やすことを目指しています。

同町内で収穫した飛騨りんごを使ったシードルも好評

「自分たちはワインの世界に飛び込むことになるまで、特にワインのことも詳しくなく何もわからないところからのスタートでした。逆にだからこそ挑戦できたと思います。友人、知人や手伝ってくれる地元の人たちの輪が広がり、安心感が生まれたことも背中を押してくれました。大反対していた件のワインショップの店主坂本さんも今では一番応援してくれますね。」 

ブドウ畑での作業風景

この仕事に就く前までワインとの接点がほとんどなかった石上さん夫妻は、飛騨高山ワインアポセカリーへの思いをこう語る。

「飛騨の多彩な料理に合わせてぜひ飲んでもらいたいと思っています。同じ土地、同じ冷涼な気候で育ったブドウから作ったワインが料理を際立たせて、引き立てあう存在になってくれると思います。」

唯一無二のワインを生み出すブドウ

始まりは二人で描くひとつの思いから。その思いが仲間を呼び、地域を変えていく。農業経験ゼロからブドウを育て、ワインを醸し、そして人との繋がりを紡ぎながら生まれた唯一無二のこのワインが、飛騨高山の新しい特産の一つとして多くの人々を楽しませる、そんな未来が二人の目には映っています。

今回ご紹介した飛騨高山ワインアポセカリーのワインは、安定的に仕入れが可能となった際は、ホテル内店舗にて提供を予定しています。

2024/12/10更新 取材協力: 飛騨高山ワインアポセカリー 代表 石上寛さん・佳菜さん
関連記事:坂本酒店 7千本の地下ワインセラー

飛騨高山ワインアポセカリーのワイン

「飛騨高山ワインアポセカリー」

飛騨高山ワインアポセカリー

営業案内 飛騨高山ワインアポセカリー
(https://hidawine.co.jp/)
ONLINE STORE
(https://hidawine.shop/)

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