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ぎゅぎゅっとつまった甘味と旨味
飛騨ヘルシートマト
もぎたてをそのまま丸かじりしたくなるような、真っ赤に熟したトマト。ハウスの中で並んだ樹の間から、ずっしりと重そうな実をのぞかせています。
周辺をぐるりと山に囲まれ、清らかな水と空気、豊かな自然に囲まれた飛騨高山。夏でも朝晩はぐっと涼しくなり、昼夜の寒暖差の大きなこの土地の気候のなかでの野菜作りは、決して温暖とは言えない、自然の厳しくも豊かな高冷地ならではの「旬」とともにあります。
夏から秋への短い期間だけ味わうことができる、【飛騨ヘルシートマト】の農家さんを訪ねてみました。
【飛騨ヘルシートマト】は「美味しさに特化したトマトを作ろう」と10軒の農家が集まり、グループで味のいいトマト、安心安全なものづくりに取り組んでいます。
班長の三ツ岩光男さんらがトマト作りを研究するグループを立ち上げたのが20年前。
「飛騨には300軒ほどのトマト農家があります。その中で自分たちが食べておいしいトマトを作りたい、と思ったのが始まりです。
一般的なものづくりでは価格の安いもの、たくさん量の採れる品種が求められてしまいます。300軒の農家の中の最大公約数のものづくりを求めるのではなく、とにかくうまいトマトを作ろう。それには樹でしっかりと熟してから収穫したい。お客さんの口に入るものだから安心安全なトマト作りを追及したいとスタートしました。」今では脱サラしてUターンののちトマト農家になった販売・担当の永畑祐一さんら、40代から60代までのメンバーが集まり、組織化して15年。JAからの紹介で関西圏のコープや有名スーパーへと取引も広がり、味も品質もいいと安定した契約で生産されています。
「この取引先は商品の安全性や品質にとてもシビアで厳しいので有名なんです。私たちも農水省による特別栽培農産物の認定を受け、合成農薬・化学肥料の50%以上削減、良質の有機肥料をグループ全員で統一して使い、天然ものの葉面散布剤を使うなど、手間はかかっても安心安全健康への取り組みは、グループ全体で二重三重のチェックをできる仕組みを作っています。」と三ツ岩さん。
また取り組みの一つとしてマルハナバチによる自然交配にもこだわっています。現在のトマト作りでは人工的に授粉したとトマトが認識するホルモン剤を与える方法が認められ、一般的だと言います。
「トマトは蜜をもたないので花粉しか出しません。そこで花粉を集めるマルハナバチに働いてもらうんです。ハチも生き物ですから、おのずと農薬が制限されますよね。しかもハチ交配によるトマトは栄養価が高まると言われ、味の良さにもつながるんです。」と永畑さん。
ハチ自身も35度を超えると死んでしまうため、猛暑が続くと蜂の巣箱をタオルでくるんだ保冷剤で冷やしたり、手間暇も余計にかかるのだといいます。
「我々農家の努力は当たり前だと思うんです。自然相手なので毎年同じにはならないですが、作物の生育のお手伝いをしていると、誠意をもってあえて手間のかかる方法を選ぼうと言っています。農家としてはこれだけ努力と手間をかけているのだから、見返りとして単価として欲しいと思うものでしょうが、自己満足であってはいけないと思うんです。
あきらかに”味が違う”と思っていただけなければ、お客様には伝わらない。スーパーのPOPやホームページでもこだわりはいろいろ謳っていますが、味が違う、美味しいと思ってもらって初めて、お客様は次にPOPを見返してくれるのではないでしょうか?」と三ツ岩さん。
「甘さやトマトらしいうまみがぎゅぎゅっと詰まった味なんです。夏場の暑い時期は虫に強くなるために、トマトがみずから自然にクエン酸を持ち、すっきりとした酸味が楽しめますが、秋になると高山は朝晩冷えますから、トマトが凍えて種が死なないように、根から最後の力を振り絞ってアミノ酸をだし、それが格別の甘味と旨味になるんです。
夏から秋にかけて、旬の美味しさが変わっていくのも、飛騨高山ヘルシートマトならではなんですよ。」と永畑さん。
人の身体も夏場は酸味が欲しくなり、秋にかけては糖度や旨味を味わいたくなるもの。改めてトマトと言う小さな自然の中に、旬をいただくということの意味を教えられた気持ちになります。
飛騨高山は標高550~800mの飛騨盆地に位置し、温暖肥沃な農業好適地のイメージとは少し違います。しかし大規模農園のように燃料を使った暖房や冷房に頼るのではなく、ゆたかな自然が与えてくれる温度帯に沿いながら、1軒1軒の農家が丁寧な栽培をすることで、自然に近い旬のある野菜が育っています。
太陽や季節の恵みや移ろいを感じつつ、その恵みをトマトや野菜の味から感じ取る。
四季折々、鮮烈な旬の息づく飛騨高山で、もぎたてを頂くような新鮮な美味しさをぜひ、野菜からも味わってみてください。
2019/10/28 取材協力:飛騨ヘルシートマト