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飛騨の伝統や、気候風土のなかで育まれる酒造り
久寿玉 平瀬酒造店
高山城址のふもと、海老坂をおりたところにあるのが、飛騨で400年の永きに渡り酒造を営む平瀬酒造店。
高山では最も古く、そして最も大きな蔵です。
地元ではおめでたい名前ということもあり、お祝い事や祭りの席に招かれるとこちらの「久寿玉」を選ぶ人が多い、いわば馴染み深いお酒です。
記録によると300年ほど前には市内に56軒の酒蔵があったほど、かつては酒造りが盛んだった飛騨高山。
代々その名を襲名し、十五代目平瀬市兵衛さんに酒蔵を案内していただきました。
「酒蔵巡り」イベントは2019年をもって終了となります。
2020年からは「飛騨高山・7蔵のん兵衛まつり」にリニューアルされます。
※「飛騨高山・7蔵のん兵衛まつり」では酒蔵の公開は行われません。
「金森長近が飛騨を治めた1586年より前、1500年頃にはこの地にすでに酒造りが伝えられ、豪商たちの副業にもなっていたのだそうです。
飢饉のときのための備蓄米を、必要ない年は酒造りに変え、また豊作の年も農家から余剰米を買い上げ、酒にすることで米価を安定させる目的もあったようですね。」と平瀬さん。
古い町並に残る豪商たちの商家や、その豊かな財収をつぎ込んだ豪華絢爛な高山祭の屋台、飛騨地方には大きな農家も多く、酒造りが豊かな街作りの一翼をになっていたのだそう。
こうして花開いた山の都は、やがて徳川幕府の直轄地「天領」となります。
「天領として他の土地から簡単には入ってこれないよう、交通網を発達させなかったため、戦後の経済発展から取り残され、昔の町並が残っていると、ディスカバージャパンで観光地として注目を浴びるようになったのです。残る酒蔵は現在7軒、高山蔵元会として力を合わせて残していこうと頑張っています。」
それぞれが個性ある酒造りに挑戦している高山の酒ですが、平瀬酒造店の酒は10月末から、冬のまさにこの時期のみ、酒造りを行っています。
揃いの半被を着たガイドさんに先導され、普段入れない蔵の奥で酒造りの様子を伺いながら利き酒も楽しめると人気のこの企画。
英語や中国語にも対応したガイドさんもいらっしゃいます。
「仕込み水は、北アルプスの伏流水ですが、硬度15度という超軟水で、これは京都伏見の水より柔らかいと言われます。
加えてこの土地と水で育てた【ひだほまれ】という、酒造好適米を使い、酒造りに適した寒冷な気候に加え、
代々受け継がれた酒造りの精神。ここでしか出来ない酒で、人の心を動かせるものづくりを目指しています。」
平瀬さんは酒が果たす役割は、かつての街づくりや人の心を和ませるだけではない、と言われます。
「日本酒を搾った後の酒粕は、粕漬けや粕汁などに使われるのはもちろん、粕取り焼酎にしたり、この焼酎を使ってもち米、麹米を加えてみりんを造ったりしました。そして江戸前寿司に使われた赤酢も酒かすから造られました。これらの調味料は和食に使われており、日本の食文化の根幹に、このお酒造りは欠かせなかったんですね。」
かつては酒唄を歌いながら、調子に合わせて仕込まれた酒。たとえ製造方法や技術は変わっても、土地に根付いた酒造りは、変わることはないもの。
現在、酒造りに携わるのは夏は米や果物、花やトマトを作るの地元農家でもある蔵人たち。この土地に住み、この土地を愛し、厳しくも豊かな自然の中、
人の和と伝統を紡ぎながら、酒を醸す姿がありました。
冬の飛騨高山で、酒造りの伝統に触れ、出来立ての清冽な新酒とともにひととき、楽しんでみてはいかがでしょうか?
2019/11/25 更新 取材協力:久寿玉 平瀬酒造店
有限会社 平瀬酒造店
アクセス | 住所:〒506-0844 岐阜県高山市上一之町82番地 TEL:0577-34-0010 http://www.kusudama.co.jp/index.htm |
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