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江戸時代の御役所

「高山陣屋」の七不思議(前編)

高山陣屋

高山の観光名所「高山陣屋」。朝市でも知られるこのスポット、門前で記念撮影する観光客は多いですが、中をじっくり見学しないとその魅力は伝わりません。実は陣屋は江戸時代の御役所(代官所)だということはご存知でしょうか?そこには当時の身分制度や人間模様を背景とした様々なドラマが眠っているのです!今日は高山陣屋所長で、歴史ガイドでもある宇津宮さんの案内で、館内を見学しながら陣屋に眠る七不思議を追いかけてみたいと思います!

【不思議1】 山奥なのに徳川幕府の直轄領

カメラスポットとしても有名な陣屋門をくぐるとすぐにチケット受付。ここで今日ガイドをお願いする宇津宮さんと落ち合います。「早速ご案内しますね」そう言われて履物を脱ぎ、建物に入ろうとすると、玄関幕には葵紋が。高山は「天領」と呼ばれる天下人(=徳川将軍)の直轄領で、江戸時代この紋章は徳川一門の施設でしか掲げることができませんでした。でもなぜ?飛騨は江戸から遠く離れた山深い領地。今でこそ交通網も発達し、東京から車で5時間程度で行けるようになりましたが、当時は訪れるのも大変な僻地。

陣屋門をくぐり本日のナビゲーター宇津宮清和さんと合流

宇津宮さん「江戸初期、ここは天領ではなく飛騨高山藩と呼ばれ藩主金森氏が6代107年間統治していました。確かに山奥の僻地ですがそれゆえ資源は豊富でした。当時は建築も造船も木造が基本です。また、木炭は武器を鋳造する際に必要でした。豊富な木材に恵まれた飛騨の領地は幕府の戦略上大変魅力的な土地でした。それに鉱山もあって鉄や金も採掘されました。そうした背景から6代藩主、金森頼時の時代に突然藩主の金森家は移封され、幕府の直轄領となったのです」

葵紋が描かれた玄関幕は要チェック

「お前の持ってる土地は魅力的だから俺によこせ」って突然引越しさせられたら災難ですね;飛騨の資源をめぐる幕府の戦略とそれに巻き込まれる外様大名の金森氏、歴史の黒いドラマを感じます。

【不思議2】 壁に描かれた波模様

玄関幕をくぐると立派な床の間に美しい波模様が書かれた大きな壁が。規則正しく描かれた幾何学模様が壁一面に広がる様は圧巻。迫力さえ感じます。これは一体なんでしょうか?

整然と並ぶ幾何学模様が美しい

宇津宮さん「これは青海波(せいがいは)と言って海の波を模した縁起物の模様です。古くは平安時代の雅楽の衣装にもあしらわれた模様ですが、幕府直轄の高山陣屋ではふすまや壁などにこの模様を散りばめることで、海の波のように終わり無くどこまでも無限に続く徳川の世をたたえることが好まれたとされています」

玄関前の砂も美しい波模様

後から気が付きましたが、実は玄関前の砂まで青海波模様に整備されているんです!入る前に要チェックですね。 おめでたい模様は現代でもフォーマルな場でよく使われていますが、江戸時代の代官所である高山陣屋もまた公の場。縁起を担ぐ習慣は今も昔も同じなんですね!

【不思議3】 館内に150匹もいる“真向きうさぎ”

床の間でふすまに見とれていると柱に何か付いているのに気が付きました。よくよく見るとあっちにもこっちにも柱に鉄のうさぎがついています。ちょっとずんぐりとした体系で愛らしいこれは一体なんでしょう?

ずんぐり体系の兎があちこちに

宇津宮さん「これは釘隠しといって、お城や寺院など格式のある和風建築では、柱に打ち付けた釘頭が見えないようにするためにこのような装飾品を使うんです」

取材チーム「神社などに行くと柱に金具が付いているあれですね!」

宇津宮さん「そうです。釘隠しには様々なデザインがあるんですよ」

取材チーム「昔の人は遊びごころがあったんですね!でもなぜ高山陣屋の釘隠しはうさぎなんですか?」

宇津宮さん「陣屋の釘隠しに使われているのは“真向き兎”というモチーフです。うさぎは子供をたくさん産むので縁起物として。また、火事から守ってくれる魔除けの力があると言われていたため。さらに、大きな耳は民衆の声をよく聞き、良政を行う志を表したものとされ、治世の象徴とされました。高山陣屋にはこの真向き兎の釘隠しが150箇所もあるんですよ。館内を見学しながら兎探しをするのも楽しみ方の一つです」

全ての真向き兎を見つけられるでしょうか

高山陣屋で採用されるのにぴったりの真向き兎。さしずめ江戸時代のゆるキャラといったところでしょうか(笑)今も昔も何かのシンボルにキャラクターを使う習慣は変わらないんですね。

銘菓真向き兎サブレ

【合わせてチェック!】
高山旅館ホテル組合のオリジナル銘菓真向き兎サブレはこの釘隠しを模した焼き菓子です。包装紙には青海波もプリントされているのでお土産処で見かけたらぜひチェックしてみて下さい。

お買い求めは高山一のお土産処「飛騨物産館」が便利です!

【不思議4】 畳の縁の模様違い

宇津宮さんに案内されながら館内を回っていると、不思議なことに気が付きます。

取材チーム「このお部屋、同じ部屋なのに手前と奥で畳の種類が違いますね。一見中途半端で統一感がないように思うのですが何か意味があるのでしょうか?」

同じ部屋でも畳の種類が違っている部屋がいくつかありました

宇津宮さん「江戸時代は身分制度が大変厳しくお部屋の造りはもちろん、畳の縁に至るまで身分ごとに仕様が決められていました。一番偉い代官の利用する場所の畳には縁に柄が入っていますが、部下たち役人の利用する場所の畳は地味な縁に、もっと下の者が使う場所は縁なしになります」

取材チーム「大変厳しい身分制度ですね」

宇津宮さん「お部屋はもちろん、出入り口やトイレまで身分ごとに細かく分かれています。高山陣屋には出入り口は7箇所、トイレは12箇所もあるんですよ。代官の奥様でさえ夫と同じ出入り口は使えません。さらに女中の部屋には雨戸がなく、朝になったら強制的に朝日で目が覚める造りになっていたんですよ」

縁の種類が違う畳たち

うへぇ~(>_<;)身分ごとにそんな細かいことまで決められているんですね。朝寝坊できないなんて辛すぎます!昔の身分制度はすごく厳しかったんですね。

高山陣屋奥深し!まだまだある陣屋の不思議!

ガイド付き見学ツアーやってます!

まちなか観光と高山陣屋見学がセットになったガイド付き散策ツアーを開催中♪今回取材させていただいたようにただ見ているだけではなかなかわからないような歴史の裏話や、え!?そうだったの?という意外な秘密までガイドがたっぷり解説します!

歴史旅ツアー

2016/2/24 UP 取材協力:高山陣屋

高山陣屋

高山陣屋

アクセス 住所:岐阜県高山市八軒町 1-5
TEL:0577-32-0643
入場料 440円(高校生以下無料)
開館時間 8:45~17:00(11月~3月は8:45~16:30)

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