地元民がとっておきにしている“たばる”な情報を突撃取材!
- グルメ
- ショッピング
- ご当地食材
- 通年
“おぞい”が生んだ最高の個性
山之村の寒干し大根
2015年ミラノで開催の国際博覧会。148カ国もの国々が参加する中、日本館では飛騨の伝統食品「寒干し大根」が日本を代表する、未来につながる伝統の知恵と技として紹介されました。厳しい気候を制御するのではなく、理解し、ここで採れたものを使い、ここで作る。そんな風に自然と共に生きることで作られる寒干し大根。苦労や美味しさのヒミツを取材しました。
飛騨のお土産屋さんやホテルや旅館のお食事、地元スーパーなどにも出回る山之村の寒干し大根。地元で親しまれる伝統の味は煮物にすれば砂糖やみりんを加えなくても甘く仕上がるほど、自然の旨みと甘みがたっぷり凝縮されています。そんな寒干し大根。実は作るのに大変な苦労があるんです。
寒干し大根が作られる「山之村」は地図を探してもその地名を見つけることはできません。飛騨市神岡町から車で1時間近く、標高1,000mの高地に広がる集落。その通称が昔から文字通り山之村と呼ばれ、地図にない村とも言われています。この天空の集落は周囲をさらに高い山々に囲まれた盆地で、昼夜の寒暖の差が非常に激しく、真夏でも夜になると暖が欠かせないとまでいいます。
冬になると2メートルも雪が積もる厳しい環境の山之村。「昔はこんなおぞいところ(不便な土地)に住んでいると人に言うのが嫌だった」と語るのは山之村で寒干し大根を作る清水さん。吹雪になれば前も見えなくなるほどの過酷な環境での生活。胸を張って私はここの出身ですとは言えなかったそう。そんな認識が変わるのが、地元のかかさ(お母さん)たちで結成されたすずしろグループによって寒干し大根が特産品として認識されるようになってから。
寒干しは百年以上前から母の味として食べられてきたもの。「この土地はおぞくて嫌だったけど、この味がなくなってしまうのは寂しいと思った。みんなで力を合わせて他の地域の人にもこの味を知ってもらいたかった」最初は手探りだったすずしろのかかさたち。失敗も経験しながら寒干しに向く大根の品種選びや作付け、製法の改良などを重ねこの土地で採れた大根を使ってこの土地で作る、「奥飛騨山之村の寒干し大根」が完成したのでした。
寒さが厳しい「寒の時期」と呼ばれる12月~2月に大根を湯がいて軒先で干して乾燥させる寒干し大根。昼と夜の寒暖差で夜のうちに大根の水分が凍り、昼の暖かさで溶けて大根から抜ける。甘みと旨みだけが残りぎゅっと凝縮されていく。それを何日も繰り返し寒干しは完成していく。「この土地の風土が作りだす“凍み”、“風”、“太陽”が大根を甘くする。昔はただおぞいだけだと思っていた土地が今はこのどこにも作れない特別な味を作ってくれる」笑顔で語る清水さん。
大根作りの草刈や虫除け、軒干しの大根板を動かす時など力仕事もあり、かかさたちだけでは大変な作業も。(なんと84歳のかかさも現役でがんばってます!)そんな時はグループで協力しあい家族や近所の人たちも手伝ってみんなでこの味を守っています。「寒干し作りは大変。軒干ししている時に雨が降ってカビが生えてしまったことも。気温は-20℃を下回るくらいだし、この土地は強い風が吹くのも特徴。本当に厳しい自然の中で、その自然を制御するのではなく活かして作る。それが山之村の寒干し大根」
自然の厳しさをブランドにまで高めたすずしろのかかさたち。清水さんの言葉にはそんなかかさのたくましさを感じました。皆様も飛騨にお越しの際にはぜひ山之村の寒干し大根をお召し上がり下さい。地元のお食事処の他飛騨物産館でも販売しておりますのでお手軽にお求めいただけます。どのお料理も調味料ではない大根本来の甘さを感じることができるでしょう。
山之村の寒干し大根が和食会席でお召し上がりいただけます。
高山グリーンホテルの「飛騨牛和食会席プラン」で、山の村の寒干し大根をお出ししております。その他にも旬の飛騨の味覚がございますので、是非ご賞味ください。
2015/7/20 UP 取材協力:山之村すずしろグループ
JAひだ 森茂営業所
アクセス | 住所:飛騨市神岡町森茂1514 TEL:0578-82-2538 |
---|