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ひだ正宗の蔵元に突撃!

川尻酒造場の熟成酒

川尻酒造場の熟成酒

冬の高山名物と言えば市内に7つある蔵元の酒蔵公開!名水の多い高山は昔から地酒処として知られ、冬には毎年普段は見られない、蔵の奥にある酒造りをしている所が見学できる「酒蔵巡り」イベントが開催されます。今回は2016年の冬に酒蔵公開された7つの蔵元の中から、創業天保10年(1839)の川尻酒造場の酒蔵公開についてレポートします!

雪のちらつく古い町並みを歩いて行くと、杉玉のぶら下がった看板が。杉玉は日本酒造りをしている酒蔵が、新酒ができた目印に軒先に吊す飾り。近寄ってみると看板には「酒蔵公開中」の文字が。看板が出ているのは「ひだ正宗」で有名な酒蔵、川尻酒造場の蔵の前。早速中に入ってみると、木組みの柱が重厚な店内に見学グループが集まっていました。

公開中の酒蔵の目印「杉玉の看板」と創業178年の趣きある店内

公開中の酒蔵の目印「杉玉の看板」と創業178年の趣きある店内

「酒蔵の奥をご案内しますよ」
入ってすぐのショップエリアをうろついていると、奥の酒造りエリアから声をかけてくれたガイドさん。酒蔵巡りイベントでは地元のガイドさんが期間中酒蔵に常駐し、お酒の造り方や歴史を詳しく解説してくれます。ガイドさんの目印は鮮やかな柄の法被。これは高山一の大イベント、高山祭で使用されるのと同じ柄のもの。早速店内にいた他の観光客と一緒に見学グループに加わります!

高山祭りの法被がトレードマークのガイドさんに案内されて蔵の奥へ。壁には解説ポスターも。

高山祭りの法被がトレードマークのガイドさんに案内されて蔵の奥へ。壁には解説ポスターも。

「日本酒は精米、洗米、蒸し米、発酵、もろみ搾り、火入れの工程から造られます。ここにあるのはお米を蒸すのに使われる道具で、地面に埋まっている窯の上に、奥にある甑(こしき)と呼ばれる道具を乗せてお米を蒸します。」
ガイドさんの案内で奥に進むと早速造りスペースへ。壁には酒造りの工程を解説したポスターもあり、普段飲んでいるお酒がどんな風に造られるのかわかりやすく説明してくれます。
通常食べるお米は米粒の外側部分にあるタンパク質や脂質なども残すため、精米歩合はおおよそ90%程度(10%しか磨かない)ですが、お酒の場合はこれらの成分が多すぎると香りや味が悪くなるため食用米よりもたくさん米を磨くこと。
日本酒のお米は普段食べるお米とは違い、日本酒用に品種改良された「ひだほまれ」というお米を使うこと。
などなど。日本酒に関する豆知識をいろいろと解説してくれるのでおお!なるほど~の連続です。

仕込み中のタンク。普段は蔵の扉が閉じており見ることができないエリアにあります。

仕込み中のタンク。普段は蔵の扉が閉じており見ることができないエリアにあります。

「こちらが“仕込み”の段階で発酵中のもろみを貯蔵しているタンクです。川尻酒造は昔ながらの製法にこだわる少量生産の酒蔵。蔵元によってはこのタンクが何個もある大規模な生産を行う蔵もありますが、川尻酒造場のタンクはここにあるだけです。」
ガイドさんのお話では川尻酒造場は江戸末期の創業当時からの製法にこだわる小規模生産の蔵で、銘柄ひだ正宗も高山市内の小売り店にしか出荷していないそう。
今度はその昔ながらの製法に使う装置があるところを解説してくれます。

大きな木の槽に酒袋に詰めたもろみを積み重ねていく昔ながらの“槽搾り”

大きな木の槽に酒袋に詰めたもろみを積み重ねていく昔ながらの“槽搾り”

「これが高山市内の酒蔵でも川尻酒造場にしかないもろみを搾る道具です」
案内されたのは木で作られた舟のような装置の前。見るとへりの所にタオル大の布がぶら下がっています。
「川尻酒造場では昔ながらの手作業でのもろみ搾りにこだわり、この布袋の中にもろみを詰めて、木の槽に積み重ねていきます。」
もろみを生酒と酒粕に分離するもろみ搾りの作業。圧搾機や遠心分離機を使って機械化する酒蔵がほとんどですが、川尻酒造場では創業当時からの伝統的な方法で行うそう。へりにかかっていた布は実は袋状になっていて、この袋ひとつひとつにもろみを詰め込み木の槽に積み重ねていきます。優しく圧力をかけることでもろみはゆっくりと布袋から染みだし、袋には酒粕だけが残ります。手間ひまかかる方法ですが、雑味が出にくく、日本酒本来の味わいが楽しめるので川尻酒造は創業から200年近く経った今でもこの方法でもろみ搾りを行うそう!

茶色く枯れて年期が入った杉玉が、同じく風格のある店内の天井の梁に吊るされていました。

茶色く枯れて年期が入った杉玉が、同じく風格のある店内の天井の梁に吊るされていました。

一通りの行程を見学すると、蔵の手前の方にあるショップエリアに戻りお楽しみの試飲タイム♪ここでもガイドさんからの解説が。 「川尻酒造場のお酒の特徴は昔ながらの製法に加え、熟成古酒へのこだわりにあります。最近は『お酒は搾りたてがよい』という方が多いですが、古酒には古酒独特のまろみや旨みがあり新酒とはまた違った味わいが楽しめるんです。」
通常新酒が出来たら新しいものと取り替える杉玉も、新酒を出荷しない川尻酒造では古いものを取り替えずに飾ってあるそう。温かいストーブを囲んでの試飲タイムでは、その時々で試飲できる銘柄は変わるそうですが、今回は2010年度醸造の「原酒ひだ正宗」を頂きます♪
まず気づくのが色味。日本酒と言えば透明を想像するかと思いますが、ひだ正宗はうっすらと黄色がかっています。軽く口に含んでみるととてもまろやかな風味!辛口には違いないのですが、新酒のようにキリっとした感じではなく優しい旨みが感じられて口当たりがとても良いです。「日本酒はキレが強すぎて苦手」という人でもこれなら大丈夫かも!

海外で賞を受賞している原酒ひだ正宗

海外で賞を受賞している原酒ひだ正宗

見学が終わり、ショップスペースでお土産を選んでいると英語の賞状が飾られています。原酒ひだ正宗は受賞すれば外務省の在外公館用にも採用される“インターナショナル・ワイン・チャレンジ”の日本酒部門でも栄えあるシルバーを受賞しており、海外では熟成古酒が高く評価されているそう。よくよく考えてみるとワインにしろブランデーにしろビンテージものには深い味わいがあり、新酒とは違った楽しみがあります。日本酒にビンテージの楽しみ方があるというのは外国の方にはごく自然の感覚なのかもしれません。
創業以来の手作業と熟成古酒。こだわりのある川尻酒造場の酒蔵公開、いかがでしたか。

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2024/9/27 更新 取材協力:川尻酒造場

川尻酒造場

川尻酒造場

アクセス 住所:岐阜県高山市上二之町68
TEL:0577-32-0143
高山駅から徒歩10分
営業案内 8:00~17:00
■不定休
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銘柄
原酒ひだ正宗(720ml)
天恩(720ml)

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