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民間ボランティア会が故郷に打ち揚げる天空の花火大会
こいこい会(飛騨宮川・煙火打ち揚げグループ)
岐阜県の最北端に位置する飛騨市は、日本のふるさとの原風景をいまだ色濃く残す街。ここ宮川町は富山県の県境に位置し、渓流釣り、鮎釣りスポットとしても人気の自然豊かな地域です。
また山の斜面に作られた棚田を縁取る石垣の曲線が美しく、この高台を活かした別荘キャンプが楽しめる「ナチュールみやがわ」が、今回ご紹介する「こいこい花火」の舞台となります。
こいこい花火は全国でも珍しい、行政や大企業からの支援を受けることなく民間ボランティアだけで打ち上げる花火大会。企画から運営までをすべて自分たちの手で行い、花火を揚げるのは三代目の会長でもある荒谷安則さん率いる、こいこい会のメンバーです。
打ち上げ会場となるのは、ナチュール宮川の芝生エリアから少し下がった棚田の岬地。このため目の前にドーンと大きな花火が開くさまは、圧倒的な迫力と、山間に反響する音の響きを体感できると、地元外にも口コミで評判が伝わりつつあります。
「ここでは飛騨市で一番大きな4号玉を揚げます。開くと直径120mになり、このギリギリの近距離から見ると迫力があるので喜ばれています。」と荒谷さん。
2019年の前回大会からコロナの影響で3年ぶりの開催となり、今年は地元の企業や一般の方からの協賛金が早々に集まり、周囲の大きな期待を感じています。
宮川沿いの国道360号線を北上すると、「嫁ヶ淵」という、助けた嫁が大蛇の化身だったという伝説を持つ淵があります。
「もともとは自分たちの先輩方が1990年頃、嫁ヶ淵にワイヤーでたくさんの鯉のぼりをつるし、市販の玩具花火をあげたりして楽しんでいたのが始まりと聞いています。毎年、夏にやっていたこの花火に『来いよ、来いよ』と誘っていたことから、こいこい会の名前の由来になりました。
そのうち、本物の煙火花火(資格が必要な打ち揚げ花火)を揚げたいと、2、3人が打揚煙火資格者の資格を取り、2001年には小学校の裏を借りて20発の打ち揚げ花火を揚げたのが始まりです。」
先輩から声を掛けてもらい、意志を継いできたメンバーは現在16名。
イベントへの出店や、冬場は豪雪地帯でもあることから、地元の独り暮らしのお年寄り宅の屋根の雪下ろしなどを手伝うことでその資金を集めています。
「行政に頼ってしまうと、予算が無くなれば続けることが困難になってしまいます。今までは地元の青年団が協力してくれていましたが、岐阜県最後まで残っていた青年団も残念ながら解散してしまいました。ですが、楽しみにしているよ、と声を掛けられたり、こいこい会を通して地元のつながりが増えているのを実感しますね。」
資金の問題だけではなく、企画から設営、安全面への配慮、バザーの運営など様々な場面で必要な人力も、外注に頼れば莫大な費用がかかります。
「実は会長は電気工事会社勤務で、当日の配線なんかも自分でやってしまいますし、ほかにも公務員、建設関係、食品関係とメンバーが甲斐性のある人ばかりなんで、なんでも自分たちでできてしまうんです。花火に合わせたミュージック演出の音響も、他ではコンピューター制御なのでしょうが、メンバーがマニュアル操作でやってます。」とこいこい会の澤さん。
「不得意なのはSNSでの発信だけで…。」と顔を見合わせて笑います。
「今年はコロナ渦の影響で花火も値上がりしてしまい、かかる費用も大きくなりました。ですが、飛騨市古川町からバザーのお店も増えましたし、他地区からの協賛もいただけるようになってきています。毎年、お盆のタイミングで開催しているので、帰省してくる家族と見たい、という声にも応えたいと思っています。」
人口600人の地区に、2000人ほどの人が集まり、普段静かな谷間の山村に歓声と笑顔が溢れます。
自分たちの町は自分たちの手で盛り上げる、そんな心意気と逞しさには、いろんな人を巻き込むパワーがあります。
こいこい花火で響かせる、彼らの情熱をぜひ、目の前で感じてみてください。
2022/08/12 UP 取材協力 こいこい会、場所提供 ナチュールみやがわ
こいこい花火
アクセス | ナチュールみやがわ JR高山本線坂上駅から徒歩20分 車/高山市内より国道41号線→471号線→360号線 富山方面約1時間 こいこい会HP https://www.hidalabo.com/detail/573/index.html |
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