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狩猟シーズンだけの天然鴨を味わう鴨南蛮
手打ちそば 恵比寿 本店
短い秋が過ぎると、キンと空気が澄み渡るように冷えこむ飛騨高山の冬。寒いある日のこと、ゾクゾクして風邪をひきそう、とこぼすと、高山生まれで高山育ちの知人から「そんな時は恵比寿の鴨南蛮を食べて、温かくして寝るに限る。風邪なんて一発で飛んでいくから。」と連れて行ってもらったのがここは古い街並の通りの一本東、上二之町に店を構える恵比寿本店。
明治三十一年、飛騨高山では最初の蕎麦専門店として創業し、毎日店頭で蕎麦を打つ手打ちそばの老舗です。
国の重要伝統的建造物群保存地区にあり、町家特有の店構えながら、気取らず地元で長く親しまれ愛される街の蕎麦屋さんです。
季節ごとに地元の旬の食材を活かしたお蕎麦が人気ですが、中でも鴨猟解禁を心待ちにしているファンが多いのが、こちらの「鴨南蛮」。
冬の間だけの限定メニューで、岐阜県内の猟で捕れた野生の鴨を使ったアツアツのお蕎麦なのです。
もうすぐ雪の便りも聞かれるかという11月15日、野ガモ猟が解禁となると、「狩猟解禁 鴨なんばん始まりました」の案内が店先にあげられます。
たっぷりの鴨肉と飛騨ネギ、そして大根おろしに生姜がのった鴨南蛮が湯気とともに運ばれると、従来の鴨ロースを使った鴨南蛮のイメージとの違いに驚く方もいらっしゃるはず。
「この鴨南蛮は40年ほど前から、先代が狩猟をしていて自ら捕った鴨をお出ししていたのが始まりです。天然のものを店でさばいてお出しするので、ロースはもちろん、ハツやレバー、砂肝などの内臓が入ることもあるので、今日はどこの部位が入っているかな、とお楽しみにされている方もいらっしゃいます。」
お店に立つのは四代目の女将、伊藤圭子さん。
天然の鴨は特有の臭みやクセがなく、まろやかなコクと脂の甘味、柔らかな肉質にビックリします。
「お店でさばいて、鴨のガラで出汁もとっています。冬になると柔らかくて火を入れると甘さを増す飛騨白ねぎとの相性もバツグンなんですよ。」と伊藤さん。
とろりと柔らかな飛騨ねぎの甘さと、ピリッときいた生姜と大根おろしが身体を温めてくれて、どんどん箸が進む野趣あふれる一杯。
お出汁を飲み干すころは、身体の中からポカポカして、あったまっていました。脂もさらりとしていて、大根おろしの効果もあり消化を助けてくれるのもうれしいところ。
年々、狩猟をする方も高齢化で減っていて、岐阜県内の天然鴨も入荷分で終了となるため、今年は2月末まであるかどうか…という季節限定メニューです。
「高山の老舗料亭で修行した先代は、お蕎麦とともに具材にもこだわりがあって、春は地元で採れたコシアブラやこごみ、姫竹などの山菜を天ざるに、夏は辛味のきいたおろしそば、秋は松茸を1本つかった松茸蕎麦と季節ごとの味を大切にしてきました。それでも家族4人で気軽に食べられる価格で、ということを先代もよく言っていました。」
こちらも天然ものの山菜をたっぷり楽しめる天ざる蕎麦が1660円、松茸蕎麦1660円と、地元の人も気軽に入れる価格も魅力なのです。ルーから手作りするカレーうどんやカレー蕎麦850円も常連さんに人気のメニュー。
水と空気のきれいな飛騨高山で、毎朝打たれる蕎麦は、七割五分。現在は五代目の伊藤宏昭さんも厨房に立ち、伝統の味を受け継ぐべく奮闘中です。
まだ高山のまちに飲食店が少なかった時代に創業し、喜んでいただくために「お客様には蕎麦もうどんも山盛りにして出しなさい」という初代の言葉を受け継ぎ、蕎麦もつゆもたっぷりと、
また濃厚なポタージュのような蕎麦湯も好評です。
実は美味しいお蕎麦屋さんが多い飛騨高山。それぞれのお店で工夫を凝らし特色のある味を出しています。ここでしか味わえない飛騨のお蕎麦に出会えるので、ぜひ訪れてみてくださいね。
2019/2/12UP 取材協力:手打ちそば 恵比寿 本店
手打ちそば 恵比寿 本店
アクセス | 〒506-0845 岐阜県高山市上二之町46 TEL: 0577-32-0209 |
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営業案内 | 定休日:火曜 (祝日の場合振替休日有) |