地元民がとっておきにしている“たばる”な情報を突撃取材!
- スポット
- 歴史・文化
- まちなか
- 通年
江戸時代の御役所
「高山陣屋」の七不思議(後編)
歴史ガイド宇津宮さんに案内されて、観光名所「高山陣屋」の七不思議を追いかける取材チーム。後半は米蔵の展示物やパンフレットにも紹介される見どころのお白州を見学します!
【不思議5】 外せる屋根
見学ルートもいよいよ後半!年貢を収める米蔵の見学という時、蔵前の通路を移動中ふと上を見上げるとひさしの屋根がなんとも素敵なモザイク柄に!これは一体なんでしょう?
宇津宮さん「実は高山陣屋の蔵の屋根は木の板を敷いて、上から重石を置いてるだけなんです。たくさん木の板を使うので中には変色するものもあり、下から見たらこのようなユニークな見た目になるんです」
取材チーム「釘止めしないんですか?崩れたりしないのでしょうか」
宇津宮さん「台風で屋根が飛んだことが1度だけありましたが、これでも案外大丈夫なんです。それにこれは元々“板返し”の手法なのでわざと簡単に外せるようにしているんです。屋根が飛んでも板を並べて石を置くだけなのですぐに修復できます」
取材チーム「板返し?」
宇津宮さん「ずっと同じ面を向けて木をおいていたら傷むので、5年ごとに上下、裏表と入れ替えます。こうすることで1枚の木の板を屋根として20年使うことができます。古くなったら新しい板に張りかえればいいだけです」
絶対壊れない丈夫な屋根を作るのではなく、最初から定期的に張り替える前提で取替えしやすい屋根を作るというのは古い手法かもしれませんがとても斬新に感じます。自然に抗う人工物を作るのではなく、自然に任せて痛んだら張りかえればよいという発想は現代の私たちに必要な考えかもしれませんね。
【不思議6】 お白洲なのに白くない
高山陣屋は江戸時代の裁判所でもあったので、罪人を裁くお白州があります。お白洲と言えばひっとらえられた罪人が自白させられて、某時代劇では「打ち首獄門じゃ!」などと言われてしまうあの場所です!ですが、高山陣屋のお白州はよく見かける時代劇のお白州とはちょっと様相が違うようです。
宇津宮さん「時代劇などに登場するお白州は、その名の通り白い砂を敷いていますが、高山陣屋のお白州は白くありません。飛騨の国には海がなく、お白州に敷くための白い砂が十分に手に入りません。そのため河原のぐり石を敷いて代用したのです」
取材チーム「立地上の問題なんですね!時代劇だとお白州では罪人が座る場所に屋根がないですが、ここのお白州には屋根があります。それも立地の問題でしょうか?」
宇津宮さん「元々時代劇には脚色が入っているので史実とは様相が異なっているそうですが、こと高山陣屋のお白州に関しては飛騨が雪国ですので屋根がなかったら冬場雪に埋もれてしまって使い物にならなくなってしまうという実用的な理由から、建物の中にお白州が作られました。さらに島流しの刑などが出ると海がないため、まずはそこに置いてあるような籠で罪人を江戸まで輸送するところから始めたそうです」
島流しされる方も命がけですが、道がしっかり整備されていない時代にわざわざ江戸まで罪人を輸送する人も大変です(^_^;)しっかりした罰を与えると執行するのにコストがかかってしまうので適当な刑で妥協しておこうなんて、現代でもありそうなよからぬ謀があったかどうかはわかりませんが山深い土地での執務は並大抵ではいかなかったのですね(T_T)
【不思議7】 農民がしたためた辞世の句
陣屋見学も終盤に入り、米蔵内の展示物を見させていただいていた時“寒紅(かんこう)は無常の風に誘われて莟(つぼ)みし花の今ぞ散り行く(寒中に咲く紅桜がつぼみのまま風に吹かれて散ってゆくように私も今はかなく散っていく)”というなんとも物悲しい文が展示されていました。これは一体…
宇津宮さん「江戸時代に当時の代官、大原氏の横暴から大原騒動という農民一揆が起こりました。厳しい年貢の取立てに反発した農民は嘆願書を提出しましたが取り合ってもらえず、幕府に直訴しましたが逆に処罰されてしまいます。不満が高まった農民は白川郷を除く飛騨全域で一揆を起こしますが兵隊に鎮圧されてしまいます。この手紙は農民のリーダー本郷村善九郎が打ち首獄門になる前に妻に宛てた辞世の句です」
取材チーム「高山でそんなことがあったのですね…」
宇津宮さん「注目するのは善九郎は17歳の農民の青年なのにこれほどの文をしたためることができたということです。日本の識字率は中世においても非常に高い水準だったといいますが、その中でも特に飛騨では教育が盛んだったことがこの句から想像できます。ただの農民の青年がこのような短歌をしたためたことはこの時代の飛騨の教育水準の高さを物語っています」
考えてみれば辞世の句がしたためられるということは文字が書けて文学にも明るくないといけません。今では当たり前のことでも中世において一介の農民がそのようなものをしたためるということは世界的にすごいことだったのかもしれません。
館内のあちこちに散りばめられたコネタが楽しくてあっと言う間に回ってしまった不思議探し。皆様お楽しみいただけましたか?ここでご紹介したもの以外にも高山陣屋の不思議はまだまだたくさんあります!皆様もぜひ直接お越しいただいて不思議探しを堪能下さい♪
前編を未読の方はぜひ合わせてご覧下さい♪
ガイド付き見学ツアーやってます!
まちなか観光と高山陣屋見学がセットになったガイド付き散策ツアーを開催中♪今回取材させていただいたようにただ見ているだけではなかなかわからないような歴史の裏話や、え!?そうだったの?という意外な秘密までガイドがたっぷり解説します!
2016/2/24 UP 取材協力:高山陣屋
高山陣屋
アクセス | 住所:岐阜県高山市八軒町 1-5 TEL:0577-32-0643 |
---|---|
入場料 | 440円(高校生以下無料) |
開館時間 | 8:45~17:00(11月~3月は8:45~16:30) |