飛騨の秋は、9月の終りに標高3000mを超える飛騨山脈の峰々から降りてきます。毎年10月9日・10日に行われる秋の高山祭の頃、高山市街では紅葉はまだ先ですが、高山市丹生川町と奥飛騨温泉郷にまたがる平湯峠（標高1684m）ではすでに紅葉が始まっています。そして、飛騨各地を駆け抜けた秋は、11月中旬～下旬飛騨国分寺の大イチョウでドラマチックなフィナーレを迎えます。
今回は地元のフォトグラファー比呂池さんに飛騨のおすすめ紅葉スポットとベストショットを撮るためのとっておき情報を教えてもらいました！

その年の紅葉が美しくなる条件はいろいろありますが、飛騨地方では以下の2つの条件がそろうと美しい紅葉が見れます。

【1】台風の直撃を受けない

飛騨地方は山と谷が入り組んでおり普段強い風は吹きませんが、台風の直撃を受けると暴風で葉が痛み、美しい紅葉が期待できなくなります。

【2】気温が徐々に下がり、紅葉の時期に雪が降らない

最低気温が7～8℃を下回って数日すると紅葉が始まるといわれますが、飛騨では強い寒波が入り秋に雪が降ることがあります。
紅葉が始まったところに雪が積もると、寒波が去り雪が解けても葉は紅葉せずそのまま枯れてしまうことがほとんどです。

これら条件が揃えば美しい紅葉が見れる期待が膨らみます。今年の紅葉はどうでしょう？今から楽しみですね。
それでは早速高山市街の紅葉＆黄葉の名所をご紹介します！

その1　城山公園（高山市）

高山市街の観光名所「赤い中橋」から東方向に望める山が城山公園です。戦国時代はここにお城がありました。市街地から近く、自然が豊かで野鳥も多く、遊歩道が整備されています。

上：赤い中橋・青い空・そして紅葉の城山公園、すばらしいコントラストです。

下：遊歩道では「紅葉のトンネル」を散策できます。

【城山公園に行く時間は？比呂池さんのとっておき情報】

城山公園では紅葉する樹々の多くが山の西側に集まっています。お昼を過ぎてから山の西側に光が当たるので、透過光で撮ると輝く紅葉が撮れます。午前中は他の場所を撮影し、城山公園へは午後から行きましょう。

その2　東山寺町（高山市）

高山市街地の東部丘陵には多くの神社仏閣が点在している地域があり、遊歩道で巡ることができます。城下町を造った当時のお殿様が、京都を見習い町の東側に神社仏閣を移転・建立したのが始まりです。

上：お寺好きなら外せないスポット。黒い鐘楼に真紅の紅葉、和の雰囲気がいっぱいです。

左下：小さいながらも庭がよく整備された寺院が多く、紅葉と杉林のコントラストが美しい。

右下：ぜひ歩いてみてほしい天照寺の紅葉のトンネル。

【ガイドと歩く散策ツアーも実施！】

美しい紅葉を見て回るだけでも満足ですが、お寺が好きな人はガイド付きで散策するのもおすすめです。自社仏閣の由来やどんな神社か、また高山の歴史なども詳しく聞きながら歩いてみると、また一味違った楽しみができます。

その3　日枝神社の紅葉（高山市）

春と秋の高山祭は全国33の山・鉾・屋台行事として、2016年12月にユネスコ無形文化遺産に登録されました。その春の高山祭の氏神様は、高山市内南部にある日枝神社ですが、観光で賑わう古い町並みや中橋から約800m離れていることもあり、訪れる人は多くはありません。

しかし、ここだけの話、他の人には秘密にしておきたい「紅葉の超～ッ隠れスポット」です。境内は地元の人が散歩をされている様子が見られますが、他の紅葉スポットと比べると比較的空いていて、運がよければ貸切状態で紅葉が楽しめます。
秋の彩りで華やかな雰囲気の中にも、神社の境内ということもあり神聖で凜としたたたずまいが満ちています。

秋の日枝神社境内の様子

その4　秋の飛騨の里（高山市）

飛騨の里は、飛騨各地から移築された民家や民具をコレクションし、昔の暮らしを再現した集落博物館で、四季をとおして訪れたい観光スポットです。

飛騨の里の秋といえば、9月に行われる「車田の稲刈り」が外せません。車田は、伊勢神宮への新饌米を作る田で、車輪の形に苗を植え、高山市松之木町と佐渡市に現存します。飛騨の里では後世に伝えるため、松之木町の車田を模して作られました。周囲の建物が雰囲気にマッチしていることもあり、飛騨の里の方が写真撮影には好都合です。また、稲刈り当日は、館内で捕れた餅米で作ったお餅がふるまわれることもお得ポイントです。秋がしだいに深まってくると樹々が色づき始め、懐かしさを感じさせる飛騨の秋の原風景が広がります。

左：稲を刈り取った後、逆さにして干す作業をカメラに収めることができました。
右：飛騨の里の道端に並ぶお地蔵さん。背景には色づいた紅葉が広がります。

その5　飛騨国分寺の大イチョウ（高山市）

タイトルを「飛騨の紅葉＆黄葉」としたのは、まさにこの大イチョウの黄葉があるからです。大工の棟梁が、境内にある塔の枡組を実は自分ではなく娘が考案したことを隠すために、娘を殺し埋めてイチョウを植えたとの悲しい言い伝えがあり、また、緑色の葉のまま散るとその冬は大雪になるとも言われています。
11月の中旬～下旬の冷え込んだ早朝に散り始めることが多く、すべての葉が数日かけて散ることもあれば、一日で散ってしまうこともあります。この時期、大イチョウがいつ散り始めるか、そして、どのように散るかが高山市民の大きな関心ごとで、すべての葉が散ると飛騨高山にも初雪が降ります。

推定樹齢1,250年 樹高28m 国指定天然記念物

【散る時も圧巻!?地元民とっておき情報！】

一日で葉が散ってしまう時は、葉の落ちる音が周囲に響き、まるで黄色いシャワーを浴びているかのように圧巻です。そして、樹の下には黄色いじゅうたんが・・・。

その6　福全寺跡の大イチョウ（飛騨市 古川町）

大ヒット映画「君の名は。」の舞台になった土地としても有名な、高山のおとなり・古川町。高山市街から車で30分程で気軽に行けることもあり、高山旅行の際にちょっと足をのばして寄られる方も多いスポットです。そんな古川町には、白壁土蔵が連なり趣ある町並みを流れる瀬戸川があります。飛騨古川の観光では必ず訪れたいスポットです。

瀬戸川には、泳ぐ鯉のぼりと言われるほど大きく太ったコイがたくさん泳いでいるので、ほとんどの人は川面を眺めながら散策します。そのため、川のほとりにこのような大きなイチョウがあることに気づく人は多くはありません。
樹高30m、推定樹齢700年、昔この地にあったお寺にちなんで名付けられた、古川の人達には馴染みのある大イチョウです。黄葉の時期になると夜はライトアップされ、川面に揺らめく逆さイチョウも見どころです。

左：月夜の下でライトアップされた大イチョウ。
右：大イチョウの横を流れる川の水面には、逆さイチョウが現れます。

高山市街の紅葉スポット、いかがでしたか？紅葉の時期はどこにカメラを向けても絵になる風景がたくさん！みなさまも散策観光の際には季節の移り変わりを楽しんで下さい。