こだわり土産の裏話

Vol11 飛騨市の老舗菓子舗にスイーツが生まれるまでの話

2021/00/00 UP 取材協力:井之廣製菓舗

高山グリーンホテル内、飛騨のお土産を一堂に集めた『飛騨物産館』で、最近、若い女性たちからもアツい人気を集めているスイーツがあります。
それはなんと【味噌せんべい】。といってもコーヒーやエゴマ、グラノーラといった素材をアレンジし、「和」と「洋」がコラボした新感覚のスイーツなのです。
人気定番の【ちょこっと珈琲入り味噌煎餅】を食べてみると、サクサクと軽い歯ごたえ、口の中に広がる香ばしい味噌の香りにやさしい甘さと旨味、ほんのり珈琲の風味と苦みが加わって、あまじょっぱい美味しさがあとを引きます。

飛騨でお菓子というと素朴な風味のきな粉や大豆、木の実や穀物を使った山国らしい駄菓子。手作りで昔ながらの美味しさは、懐かしい、と観光のお客様にも人気ですが、そんななかコーヒーや紅茶、お酒にも合うと話題になっているのが、明治41年の創業から100年以上続く老舗和菓子店「井之廣製菓舗」のこの「スイーツシリーズ」なのです。
これまでになかったアイデアが生まれた背景など、発案と商品化を担当された、店長の井之丸勝美さん、裕美さんに伺いました。

「今まで味噌煎餅は法事には選ばれていたのですが”味噌がつく”と言われて慶事に使われることが無かったんです。お客様も圧倒的に中高年の方で、味を知っていないと手が出しにくいものだったように思います。」と四代目女将でもあるお母様の勝美さん。
厳正な審査を経て認定され、岐阜県がお薦めする岐阜県産品「飛騨・美濃すぐれもの」認定商品でもあり、大手百貨店や地元のスーパーなどでも愛される味噌煎餅ですが、新たな世代に注目を集めることは少なくなっていたそうです。

そんな折、娘さんである裕美さんと娘婿の隆童さんが入社することになりました。
「最初は店番をしていたのですが、それまで勤めていた金融機関の窓口と違ってそんなにお客さんが来ないんです。(笑)それでできた時間で、たまたま戴いたサンプルのチョコレートを溶かして味噌煎餅を浸してみたんです。でも食べてみると味がくどい。それで見た目にも映えるように、上にトッピングしてみてはどうかと試行錯誤が始まりました。」

百貨店で行われる飛騨高山展などの催事に出店し、全国に出かける機会が多かった裕美さんは、そこでも味噌煎餅をおじいちゃん、おばあちゃん世代は懐かしいと喜んでくれるのに、
新しい若い世代のお客さんが手を伸ばしてくれないことを残念に感じていました。

そんな中、地元の自家焙煎珈琲店からの依頼で、コーヒーを使ったお菓子を作れないかとの声がかかります。
「味噌煎餅は味噌も熟成3年の自家製味噌をペースト状にして混ぜ込んでいて、コーヒー豆を砕いて生地に混ぜて焼くことは出来ないんです。それでチョコレートをトッピングしたことをヒントに、のせて焼いてみてはどうかと開発したのが【ちょこっと珈琲入り味噌煎餅】です。チョコレートを糊のように使うことで、トッピングの可能性が広がり、次に飛騨の荏胡麻を使ったものが生まれました。その後は全社員で商品開発のアイデアを出し合って、今では季節限定のものも入れると12種類のスイーツがあります。」と裕美さん。

スイーツシリーズで裕美さんがこだわったのがもうひとつ、パッケージです。
「催事に出かけた先の百貨店でいろんなギフトのパッケージを見て研究しました。見せるパッケージにもこだわって、少し高価になるけれどコーヒー豆用のパッケージを使っているんです。とにかく見た目にはこだわりたい。トッピングも美しい見た目になるように、1枚1枚職人が手作りで仕上げています。」

パッケージにもこだわってコーヒー豆の袋を使い、中身が見えるオシャレなプレゼンも人気の秘密。

地元の様々な生産者とのコラボも生まれ、飛騨市の野草を使ったグラノーラ入りや、季節限定で飛騨市河合町のローズガーデンのバラを使ったものは、花びらを丁寧にカットしてバラや蝶をデコレーションするなど見た目も美しく、しかも厳選された素材のヘルシーで、しかも安心な現代版の味噌煎餅が誕生しました。
「そのまんま煎餅」というクラッカーのようにトッピングを楽しむものは、チーズやフルーツなどといったトッピングの提案を近くのカフェで行い、facebookでの告知にもかかわらず100人以上を集め、大好評を博すなど、新しい試みも地元で大きく話題になってきました。

「どんなコラボや新製品でも『ただ入れました』というものにならないようにと言っています。美味しい、もう一つ食べたいな、と思ってもらえる味だけは譲れないですね。」と勝美さん。
この日も、店頭には若い世代のお客様が次々訪れ、スイーツの箱を手にしていきます。

「昔ながらの味噌煎餅も地元保育園でおやつにも使ってくださっているので、小さなお子さんが、コレが食べたいとお母さんを連れて来てくれたりします。スイーツを入り口にして、幅広い世代のお客様が手に取ってくださるようになったのも嬉しいですね。」

残念ながら伝統の和菓子や駄菓子は全国、どこでも縮小傾向にあるのかもしれません。ただこの面白さと奥深さ、誠実なものづくりを受け継いできた味はもっと多くの方に知られてほしいもの。
古いけど新しい、そんな飛騨のお菓子の美味しさを、味噌煎餅で味わってみてください。
飛騨物産館にて各種セットなどお取り扱いしております。

「ちょこっと珈琲入り味噌煎餅」開発のきっかけを作った井之丸裕美さん ご主人の隆童さんは営業担当です。

どんな願いにしようかな? あれこれ考えるのも楽しい。
お土産として完成品を購入することもできます。いろんな種類があって迷いそう。

飛騨物産館

井之廣製菓舗

電話番号
0577-73-2302
住所
岐阜県飛騨市古川町弐之町7-12
営業時間
8:00~20:00
休日
日曜日、年末年始

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